うちの引伸機はオメガD5 PRO-LABっていうんですが、夏に買って、年末年始に暗室が完成するまでずっと使わずに(というか暗室じゃないので使えず)置いてあったんです。で、暗室完成して、さあ、引伸だ~と始めました。でもなんかレンタルラボでやったように綺麗に焼けません。まあ条件はいろいろ違うのですが(引伸機も現像液も定着液も)、とりあえずオメガに詳しい友達に見てもらったんです。でそこで気づいたのはレンズボードの水平が出ていないこと。台とネガキャリアは地面と水平なのですが、レンズボードだけ先が下がっている状態なのです。レバーの割れとか他にも問題はあったのですが、最大の課題は水平が出ていないということでネガにピントが一部分しか合わない状態なのです。
買ってすぐ点検をしなかった私も悪いのですが(まあ、素人でよくわからないし)、とりあえず買ったところに連絡してみました。するとそんな症状は聞いたことが無いといいます。駄目な場合は引き取ると言ってくれたのですが、この引伸機に合わせて、暗室作ったし、ネガキャリアなどいろいろパーツも揃えたのに、なくなってしまうのは困ります。そうそうこの巨大な引伸機は手に入りませんし。とりあえず状態を見に来てもらうことになりました。
症状を詳しく調べてみると問題が起きそうなのは、レンズボードを上下するために(ピント合わせのほかに上下する仕組みになっている)レンズボードがレールにはまっているのですが、レンズボードにネジ止めされたレール摺動部がプラスチックなのです。レンズボード自体は鋳物の塊で変形するようなものではありません。またレールは垂直が出ています。ということで問題はそのプラスチックのパーツが変形してしまっているようなのです。
実は私はプラスチックエンジニアで、プラスチック部品の強度を計算したりする仕事なのですが、プラスチックに高い応力が長時間連続でかかるとプラスチックはじりじり変形していってしまうのです(クリープ現象といいます)。それはプラスチックが粘弾性体であるため仕方の無いことなのですが、そのため高い応力(高い荷重ではありません)を連続してかけるのはだめなんです。
このパーツの場合、
・上下出来るため、通常は緩まないように真中をネジでぐっと締めて止めている(突っ張り棒のような仕組み)。
・レンズボード自体も重いし、更にターレット式のレンズ取り付け部品もついており、それが非常に重い。
という仕組みのため、プラスチックに高い応力が加わっているようです。
原因はわかりました。さて対策はどうしましょう?
1)レンズねじ込みパーツをターレット式ではなく、1枚板金の軽いものにする。
2)プラスチックパーツがレンズボードに4つのネジで止まっているので、レンズボードとプラスチックパーツの間になにかを噛ませて、クリープしてしまった(つぶれてしまった)ぶんを持ち上げてやろうという作戦。
1)は引伸機を買ったお店のご主人が都合してくれるとのことで、2)を自分で行ってみました。
まあ、微妙な寸法だろうと、水準器で水平が出るまでフィルムを切って入れてみました。1枚2枚...まだまだ。3枚、4枚...まだまだ。結局15枚を入れないと水平が出ないことがわかりました。マジで?このプラスチック弱すぎ。フィルムの厚みは0.144mmですから(測ってみました)2.16mm変形しているということです。
これだけ隙間を空けると、今まではレンズボードに押し付けられて変形を防いでいた力も、曲げの力がかかってしまって、今は良くてもすぐクリープしてしまいます。とりあえず今は水平が出ているけど、解決にはならない...
ということは部品交換しかありません。新品が売っているのかアメリカ中のお店を探してみましたが、見つかりません(WEB上では。電話すれば見つかるのかもしれませんね)。あとはアルミの塊から削りだして作る?うーん、難しそう。元の寸法(プラスチック部品が変形する前の寸法)がいまいちわからないから、注文も出しにくいです。
そんな時eBayで、レンズボードの同じ物が出品されているのを発見しました。そっくり同じ物です。しかし、使い込んであります。これも変形してしまっている可能性が高いです。でもまあ駄目モトで入札してみました。$46。まあ勝つだろうと。でも負けてしまいました。新品なら$150ぐらいだしてもいいところでしたが、駄目かもしれないものに5000円以上出せません。そうしたら出品者から「もう1つあるけど$46でどう?」というメールがきました。今回は2人のみで競ったので、落札者が出品者本人で値を上げていた可能性があります。なので「$30ならいい。」と言ってみました。すると「もう1つあるものはプラスチック部品が、真鍮なので高級なんだ。$40ならどう?」という返事が返ってきました。なに!真鍮製!これは改善が期待されます。買うことにしました。
そして待つこと1週間ちょっと。
レンズボードを早速交換してみます。レールに付いているストッパーを外し、レンズボートに付いている蛇腹を外し。届いたばかりのレンズボードを嵌めて、水準器を乗せると...なんとぴったり水平が出ているではないですか! やっぱり大正解。色もグレーから黒になり精悍になりました。これならターレット式のものでも耐えられそうですが、軽いレンズねじ込みボードを取り付けて、私の引伸機の完成です。一時期はまた1から引伸機探しか?と思ったのですが、どうにかなってよかったです。別の問題(また後日ご紹介します)もありますが、引伸機不具合は解決いたしました。
Recent Comments